- DJサチコ
夫と競争して楽しんでるからギリOK
私はパズルゲームが好きだ。
パズルゲームは、1話完結の物語のようにすぐに結果がわかるという意味で気軽で、
単純ゆえに普段は勝手にフル回転している思考を削ぎ落としてくれる。
ぷよぷよに代表される「落ちもの」や、パネルでポンのような「入れ替え」系、
最近ではツムツムのように「仲間を見つけてなぞる」といったスマホならではのゲームまで、パズルゲームはとことん進化を遂げている。
ルールはどれもシンプル。だがその種類は数知れない。
そして最近私の時間を独占してやまないのが、ナンプレである。
ナンプレの正式名称は「Number Place」。
1980年代には存在していたらしい。略した名前からでも何となくそんな名前だろうな、
ナンは当然「ナンバー」、プレは「プレイ」か「プレース」か、他にプレになりそうな単語は知りませんものな、と誰もが思っただろう。まさかナンプレのナンをカレーのナンと思った人はいないだろう。
ちなみに、日本では「数独」と呼ばれているが、これの正式名称は「数字は独身に限る」だそうだ。
おい、ちょっと待てと。
急に意味がわからんぞと。
ナンプレはご存知の通り、1〜9までの数字を、縦横と正方形に並ぶ9つのマスに重複することなく入れるシンプルなパズル。「ナンバーをどこに入れるか考えるパズル」だからナンバープレース。わかりやすい。
だが数独は同じパズルでありながら「数字は独身に限る」。
このパズルのどこに独身の要素がある。
しかもこの言い方、「やはり明太子はあぶるに限る」とか「枕は硬めに限る」とか、個人的な嗜好を強調するような言い方じゃないか。
数字も独身も個人的嗜好ではないのに(独身は主義の場合もあるけど)。
やはりパズルなんて終始小難しい顔して、解いたところで人生に何の効果ももたらさないものをこよなく愛する人間がつけた名前。こんがらがり感半端ない。
「I love you.」を「月が綺麗ですね」と訳すくらいこんがらがっている。いや普通に「愛してる」って言えよ。
ちなみにこの名前をつけたのはパズル雑誌「ニコリ」を作った鍛治真起さんという方で、
日本では数独の父的な位置付けの人らしい。
競馬愛好家で、印刷会社に勤めながら友人たちとパズル雑誌を創刊したらしいが、
その雑誌の名前「ニコリ」も鍛治さんがつけたそうだ。
由来はアイルランドの競馬に出る馬から取ったとのこと。
パズル関係ないじゃん。
とことんねじれの位置から無理やり絡ませてくる手法、数独もニコリも一緒だった。
名付け親の鍛治さん自身がご結婚されているか独身かはどこにも書いてないので定かではないが、むしろ結婚していても独身でも、何かツッコミたくなってしまう魅力を持った方だ。
ナンプレは現在、かなりの進化を遂げていてバリエーションが豊富。
中でも私が今ハマっているのは「キラー数独」と呼ばれる、さっき説明した3×3のブロックとは別に、1〜4、5個のマスの合計数まで指定されているもの。
「Killer Sudoku by Sudoku.com」というアプリでプレイしている。
ちなみに数独は国内では商標登録されているが、国外ではされてない為「Sudoku」と表記される事があるらしい。
海外の人に「数字は独身に限る」という言葉のニュアンスは、果たして伝わっているのだろうか。
アプリには「やさしい」「ふつう」「むずかしい」「エキスパート」というレベル分けがされている。
私程度のパズラーからすると「やさしい」は3〜4分、「ふつう」は3〜5分、「むずかしい」は20分、「エキスパート」は1時間くらいで解ける。
エキスパートの時は1時間以上ずっと1〜9までの数字をたし続けるので、3回くらい続けた時のストレスは軽い精神的な拷問を受けたくらいの感じじゃないかと思う。
ひたすら数を数え続けるのだ。
今年で35歳。普通に会社勤めをしていれば、営業だの売り上げだの、もっと社会的に意味のある数字で頭をいっぱいにしているところだろう。
だが私は違う。1〜9の数字のことばかり考えて、最終的には「5+8が苦手」という謎の欠点を見つけているのだ。
5+8がいつも14になってしまう。多分私は前世はそういう世界線にいた。
それにしても「数字は独身に限る」を、私のような既婚で、夫の優しさにつけ込んで家事を放棄し、夕飯をコンビニ弁当にしながらやってしまう人間が存在して良いのだろうか。
家庭を蔑ろにしてまでパズルに勤しむ女。
多くの人の人生をこんな罪悪感にまみれたものにしないためにも、
やはりナンプレは「独身に限る」、なのかも知れない。